研究

本研究室では、パルスパワー技術に関する最先端の研究を行っています。パルスパワーとは、超高出力の瞬間的なエネルギーのことであり、生み出される巨大電力は、世界の瞬時消費電力に匹敵します。このエネルギーを制御し、選択した領域に対して作用させることで、大気(気体)や水(液体)、金属(固体)の瞬間的プラズマ化や地球中心部に相当する圧力発生など、通常の電気エネルギーでは成し得ない現象や反応を実現できます。

 

 

●電源開発

利用目的に応じたパルスパワー電源を構築し、基礎研究から産業応用を目指したさまざまな電源の開発を行っています。例として、コンデンサ放電回路、倍電圧発生回路(LC発生器)、マルクス発生器、磁気パルス圧縮回路(MPC)、パルス形成回路(PFN)、パルス形成線路(PFL)などがあります。出力電圧は数Vから数百kV、1パルスあたりのエネルギーは数mJから数十kJ、出力電力は数Wから数百MWと幅広くカバーしています。特に、研究室オリジナルで開発した電圧立上りおよび立下り時間2 ns、半値幅約5 ns、20-100 kVの電圧を出力できるユニークな「ナノ秒パルス電源」は注目されており、気体や液体処理の応用研究において高いエネルギー効率を達成しています。また、半導体スイッチ(SiC-MOSFET, Si-IGBT)を適用した小型高出力パルス電源の開発や大容量キャパシタバンク型電源(20 kJ/pulse)も取り扱っています。

 

●放電観測

パルス放電では、短時間のうちに大電流が流れることで過渡的にプラズマが形成されます。放電プラズマの物理特性を把握することは、プラズマ形態の制御を可能にし、利用目的に応じた電源開発につながります。当研究室では、パルス電源により形成される放電プラズマの物理特性を把握するために、超高速(数百ps~数ns)ICCDカメラや10億コマ/sフレーミングカメラ、高ダイナミクスストリークカメラ(数ps~)、分光器、レーザーなどを用いて、その形成過程の観測や物理特性の把握など、基礎研究を行っています。最新の研究テーマとしては、大気圧中で生成されるストリーマ放電のトムソン散乱計測による電子温度・電子密度計測に挑戦しています。また、気中ストリーマ放電プラズマや液中パルスストリーマ放電プラズマの発光分光法による電子温度・電子密度計測も行っています。

 

●環境応用

大気圧ナノ秒パルス放電プラズマ(非熱平衡プラズマ)を用いたオゾン生成及び排ガス処理、VOC処理、金属ナノ粒子分散、エンジン燃焼効率改善、工業排水処理(難分解性有機物処理)、農業排水の処理、並びに、大気圧パルスアーク放電プラズマ(熱平衡プラズマ)を用いた医療用一酸化窒素生成及び金属ナノ粒子の生成、水中パルス放電を用いたコンクリート破砕及び骨材再生、コンクリート用細骨材製造、コンクリート系放射性廃棄物の減容化など、数多くの環境応用やリサイクルに関する応用研究を行っています。

 

●バイオ応用

生物は外部刺激に対して反応し、その刺激の度合いによって時には自身の生命を絶ち、時には進化を遂げる。一方、パルスパワー技術は様々な物理現象を創成・制御が可能な技術です。この二つの事実を組み合わせることで、生体刺激を制御したバイオ応用である「バイオエレクトリクス」が、新たな複合研究分野として創出されています。パルス電界や放電プラズマを動物や植物の細胞や生体へ与えることで、直接的あるいは間接的に生物を活性化または不活性化させる研究を行っています。これまでに、水中有害生物(藻類、節足動物、寄生虫)の駆除、がん細胞の死滅、植物遺伝子の改良,植物生育の制御、植物光合成の制御、細胞へのタンパク質導入など、数多くのバイオ応用研究に取り組んでいます。

 

●共同研究

本研究室はこれまでに、一般企業(業種:建設業、製造業、廃棄物処理業、農業、水産養殖業、水産加工業など)や国内外の他大学・研究機関と数多くの共同研究を実施してきました。これからも継続した社会貢献を進めるべく、幅広く共同研究を募集します。ご相談、お待ちしております。